東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 3F(天王洲) | 東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル2F(六本木)

Status: Gallery

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カルロス・ロロン「Future Reminisce」
KOTARO NUKAGA(六本木)では、2021年7月30日(金)から9月4日(土)まで、プエルトリコ系アメリカ人アーティスト、カルロス・ロロンの個展「Future Reminisce(未来の追憶)」を開催いたします。2006年の日本での発表以来、実に15年ぶりの個展、またKOTARO NUKAGAでは2019年のグループ展参加以来、2回目の作品発表となります。

カルロス・ロロンは儀式やスピリチュアリティ、工芸や美学、そして美術史と美術機関の関係性など様々な領域を横断しながら探究し、アートの文脈に即して多様な表現を試みています。彼が1970年代に幼少期を過ごした自宅は、プエルトリコから移り住んだ両親や祖先たちの文化的な背景が色濃く反映されていました。 華美で高級な装飾品を模した調度品や、父親が自作した机や椅子が溢れかえっており、それらは当時の肉体労働者階級のバロック的美学を反映したものでした。例えば、様々な模様が施されたタイルや繊細な作りの磁器、安価で装飾的なガラクタ、ヴェネツィア発祥の花柄の壁紙、そして金縁の鏡などは、プエルトリコの文化的背景を表象するとともにアメリカでのより良い生活への憧れや希望に満ちていました。

植民地主義以後の多様性の包摂やそれに対する憧憬、文化的アイデンティティやその社会で作り上げられた環境を問い直すことで、ロロンは歴史そのものを検証します。また、彼自身の経験に基づいて社会的な障害を取り除き、絵画、彫刻、社会的実践、サイト・スペシフィックなインスタレーションなどを組み合わせながら独自の芸術言語形成を目指し、新たな視点の構築を試みます。例えばホワイトキューブ至上主義への挑戦的な姿勢は、幼少期に母が副業として経営していた美容院とネイルサロンの一室を再現し、美術館内にサロンを開く作品《インペリアルネイルサロン(私の両親のリビングルーム)》(シカゴ現代美術館、2013)に現れています。

一方、ロロンの平面作品には、連続的なモチーフが施された金縁の鏡やタイルを取り入れたり、トロピカルな花を描いた絵画を24金の金箔で囲ったりすることで、ノスタルジックなオマージュとして当時の壁紙の再現が見られます。これは単に装飾的な意味合いだけでなく、両親の出身地であるプエルトリコの歴史、スペインの植民地下で金の掘削によって樹林や植物、そして土地そのものが奪われた負の歴史に対する真摯な応答でもありました。この取り組みを通じ、両親やその先祖たちのように、住み慣れた土地を離れまた新たな土地に入植していく移民たちの複雑な歴史を象ろうとしたのです。歴史を想起させる様々な素材から鑑賞者たちの記憶を呼び覚ますことで個々人に内省の機会を与えます。

今回の展覧会では、こうした複層的に広がる物語を引き継ぎながら多数のタイル作品とグラファイト作品を展示します。この度発表するタイル作品は、プエルトリコのポンセ美術館やアメリカのニューオリンズ美術館にも収蔵された、初期のタイル作品を発展させた一連のシリーズです。決裂、緊張、荒廃、そして美を生み出し、個々人が持つ国家や民族から派生するプライベートな対話を、よりパブリックな領域にまで押し広げることで、タイルの持つ価値を見出しました。これらのタイルは、カリブ海周辺地域の家々への追憶を意味しており、その素材が持つ複層的な歴史を彷彿とさせます。中には18世紀に作られたタイルも含まれており、そこには歴史とともに歩んできた数多の、人種、国籍、年齢、性別を超えた多種多様な人々の足跡が刻印されているとも言えるでしょう。北アフリカのムーア文化から受け継がれ、奴隷制度によって広がった歴史的価値のあるこうしたタイルを、あえて安価な工業用タイルと並置して使用しています。そうすることで、実際に大量生産製品のタイル製造に携わりながらも、美術に馴染みの薄い労働者たちに焦点を当て、素朴な歴史へと導くノスタルジーを再創造し、移民の歴史への関心を誘います。

タイルを用いたこれらの作品は、ロロンの新作であるグラファイト作品にも影響を与えています。この絵の下絵となったのは、Historical Division of the United States Farm Security Administration (アメリカ合衆国の農業安定局歴史記録部)が約100年前に撮影し、全国的なプロパガンダプロジェクト「FSA(農業安定局)プロジェクト」の一環として使用した写真です。アメリカの風景を収めたもので、一見穏やかで当たり障りなく見えます。しかし、実際はアメリカ政府によるマーケティング戦略の一環で、アメリカ軍がプエルトリコを占領下に置くことにより「繁栄」したことをアピールするために撮影されたものでした。一世紀も前の写真を今、異なる技法で再現する事で、祖先の混沌とした歴史と抑圧の象徴に立ち戻り、埋もれていた美しさ、追憶、希望を再び描き出します。

ロロンは、自身の出自まで連綿と連なる歴史を背景とした装飾的な美学に忠実であり続ける一方、その表現や作品解釈は常に鑑賞者に対して開かれています。ロロンにとって最も身近な記憶の断片であるタイルが語る歴史は、パブリックなノスタルジーへと接続し、様々な国籍や背景を超え人々に親密な鑑賞体験をもたらします。

[開催概要]
カルロス・ロロン「Future Reminisce」
会期: 2021年7月30日-9月4日(土)
会場:KOTARO NUKAGA 〒106-0032 東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル2F
アクセス:東京メトロ日比谷線、都営地下鉄大江戸線「六本木駅」3番出口より徒歩約3分
開廊時間:11:00−18:00 (火-土)
※日月祝休廊
※国や自治体の要請等により、日程や内容が変更になる可能性があります。
2021-07-24

Information

URLhttps://www.kotaronukaga.com/projects/future-reminisce/
Address〒106-0032 東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル2F

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