杉山卓朗 個展「PAGUROIDEA」

このたび、TEZUKAYAMA GALLERYでは9月20日より杉山卓朗の個展「PAGUROIDEA」を開催いたします。

杉山は1983年に千葉県に生まれ、現在は兵庫県を拠点に活動しているアーティストです。これまでに五台山竹林寺(高知県)、ASYL(元梅香堂/大阪府)での個展開催など、主に関西圏を中心に作品発表を重ねてきました。杉山は線や色面といった絵画を構成する最小限の要素を扱いながら、厳密かつ組織的に反復・再構成する事で幾何学的なイメージを生成します。それらのイメージをアクリル絵の具を用いて、精密にキャンバスに描き起こすことで錯視的な視覚効果を伴った絵画作品を制作しています。

特筆すべきは、イメージの生成時に作り手と作品との間に恣意的な要素や曖昧な意思決定が介在しないよう杉山が意識的であるという事です。規則性やルールに基づく反復行為、アルゴリズムによる画像生成といった機械的な工程を作品制作の中に取り込む事で俯瞰した視座を獲得し、そこから表現の手段となるモチーフを導き出そうとする点において、作品と自身との関係性や繋がりをも相対化して捉えようとする態度が通底しています。

合理的なプロセスを介すことで、主体と客体といった相反する視点に拮抗したバランスを生み出し、そこから相互に派生していく選択肢の中から取捨選択を繰り返す事によって、形式と視覚的要素のみを抽出する”イメージの純化”を試みる一つの方法だと言えます。それと同時に、立ち上がってくるイメージの背後に存在する”選択されなかった無数の可能性(選択肢)”を多層的に内包する事を可能とし、多様な視点や思考が同居したアンビバレントな相互関係のうえで作品が成り立っているという事を鑑賞者に示唆しています。

TEZUKAYAMA GALLERYでの初個展となる杉山卓朗の個展「PAGUROIDEA」を是非ともご高覧下さいませ。


[アーティストステートメント]

意志というものがあるとすれば、漠然と身体の中にあると考えていた。
だが、それではなんだかつじつまが合わないような気がする。
意志は関係性や場所にも宿っていて、
私たちにはそれを観測する術を持たないので
身体の中のどこかに意志があると思い込んでいるのかもしれない。

春頃からこの展示に向けて絵を描いてきた。
私は自宅で描いているので、食事の時も就前にも絵が風景のようにある。
これがなんだか心地が良い。住処ならではの良さだ。
しかし展示空間にしかない良さもある。それは観るという行為の純粋さではないだろうか。
窓がない白い壁に作品は展示され、温度と湿度を一定にして騒音などは極力排除する。
まるで脳と目を空間にプカプカと浮かせているようだ。
それはなるべく身体感覚をもたずに鑑賞する行為である。

PAGUROIDEAはヤドカリの学術名である。

貝殻は場所。
貝殻に住むことは関係性。
ヤドカリは身体を示している。

三つの面があり、明度が違う色がそれぞれ配置されていれば、立体的に感じることができる。
現実に見える風景をかなり簡略化したものだが私はこの描き方をとても魅力的に思う。

絵画がある風景を通じて感じるいろいろなことを想像してみる。

Galleries (Click to see works)

Yamazaki Bldg. 2F, 1-19-27 Minami-Horie, Nishi-ku, Osaka, JAPAN