企画展『Acts of Care』 第1期:マイヤ・タンミ『Octomom』

カナカワニシアートオフィス合同会社は、2025年2月22日(土)から2025年4月26日(土)まで、KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHY(西麻布)及びKANA KAWANISHI GALLERY(清澄白河)に於いて、3つの会期にまたがる展覧会『Acts of Care』を開催いたします。​

本展は、カティ・キヴィネン(ヘルシンキ美術館主任学芸員)とピルッコ・シータリ(インディペンデントキュレーター/元ヘルシンキ現代美術館館長)の2名のキュレーターが、第15回光州ビエンナーレ・フィンランド館の為に企画した展覧会の日本巡回展を骨子としながら、アーティストによっては日本展のみの特別インスタレーションも実施し開催いたします。

​本展を企画したキヴィネンとシータリは、「ケアとは愛情を感じる能力でもある」と指摘し、オルガ・トカルチュク(ポーランド)が2018年ノーベル文学賞授賞式で語った「優しい語り手としての作家の役割」を、次の様に引用しました:

​優しさは最も控えめな愛の形である。聖典にも福音書にも出てこない、誰も誓わない、誰も引用しない愛の形だ。特別な紋章や象徴があるわけでもなく、犯罪につながるわけでもなく、嫉妬を促すわけでもない。それは、私たちが他の存在、つまり『自分自身』ではないものを注意深く見つめるとき、どこにでも現れる。
優しさとは、自発的で利害関係がなく、共感的な同胞感情をはるかに超えたもの。意識的なもの。いささか憂鬱ながら、運命を共有するもの。
優しさとは、他者に感情的な深い関心を持つこと。かれの脆さや、唯一無二の性質や、苦しみや時間に対する免疫の欠如などに対しても。
優しさとは、私たちをつなぐもの、類似性と同一性を認識すること。世界が生きていること、そこに自分が生きていること、相互につながっていること、協力し合っていること、それ自体に共依存していることを示しながら。
​同様に、『Acts of Care』のアーティストたちもまた「優しい語り手」としての役割を担っています。彼らの物語を通して、共感をしたり、人生の感情的な風景を描き出すことに誘われます。その根底にあるのは、触れたり、視線を交わしたり、声のトーンや、対話など、見過ごされてしまいがちな、大切なケアのジェスチャーなのです。​​
(第15回光州ビエンナーレ・フィンランド館『Acts of Care』リリーステキストより抜粋)

フィンランドは北欧諸国で最も高齢化が進み、世界でも6番目に高齢化率が高い国ですが(2023年23.58%)、国連による世界幸福度報告書では7年連続一位(2018年以降)を獲得しています。対して日本は、もはや世界二位の高齢化率(2024年29.3%)を歩みながら、世界幸福度ランキングは常に最下位近辺(2024年51位)をさまよい、進みゆく高齢化社会で幸せを実現していく姿勢において、非常に対照的です。

しかし子と親が互いに思いやり、属する集団で役割を担いながら、日々を営み、命を繋げていく行為は、世界共通であるばかりかすべての生物に共通する事象でもあります。異常気象や情勢不安など、その必要性が今後ますます高まりゆく現代社会において、目前に横たわる現実と、想像力を喚起させるアートの営みは、いかに響き合うのでしょうか。

このたび韓国光州から東京への巡回を経て編み直されるフィンランド人アーティストら「優しい語り手」たちの表現を、是非お見逃しなくご高覧頂けますと幸いです。

第一期では、KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHYにて、2025年2月22日(土)よりマイヤ・タンミ個展『Octomom』を開催いたします。​​

マイヤ・タンミは、1985年ヘルシンキ生まれ、アールト大学(ヘルシンキ)博士課程修了。あらゆる観点から、物事の「根本的な真相」に迫るべく、科学者や他のアーティストたちと積極的にコラボレーションし、感情を揺さぶり、驚かせる作品を制作しています。弊廊での個展は2017年に開催の『白兎熱 / White Rabbit Fever 』以来8年振りになります。

本展で発表される《Octomom》は、「オーディオ・ストーリー」、「砂に投影されるプロジェクション」、「産後まもない新生児を抱く母の肖像写真」の三要素で構成されるインスタレーション作品です。科学者たちに「オクトマム」と名付けられた深海1,397メートルの母ダコは、53ヶ月間(4年7ヶ月)にも及ぶ長い期間に渡り卵を抱き続け、抱卵期間として世界最長記録となりました。​

フィンランド写真美術館の個展(2023年)で初めて発表され、トゥルク美術館での個展(2024年)、光州ビエンナーレ・フィンランド館(2024年)での展示を経て、このたび初めて国内で発表されるマイヤ・タンミのインスタレーション《Octomom》を、是非お見逃しなくご高覧ください。

Galleries (Click to see works)

4-7-6 Shirakawa, Koto-ku, Tokyo

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